日本語を勉強することと日本語を使うことのあいだにある差は、教材を教科書が決めていて、生活を目の前の棚が決めている、という点にほぼ集約されます。
ここに住んだことのある人なら、一章終えてスーパーに入り、パッケージがほとんど読めなかった経験があるはずです。
それは勉強の失敗ではありません。教科書は語を文法的な難易度で並べます。生活は、たまたま必要になった順で並べます。この2つの順序は、ほとんど関係がありません。
環境をそのまま教材にする
実際に必要な語は、すでに周りの物に書かれています。そして繰り返します。同じ20語がこの国のあらゆる食品パッケージに載っていますし、同じ15語があらゆる公的な書類に出てきます。
出会った順に覚えると、語のひとつひとつに状況がついてきます。単語帳では定着しないものが定着するのは、そのためです。
カメラがある場合の具体的なやり方
「何」の次に「なぜ」を聞く。これは何と書いてありますか、では忘れる訳文が返ってきます。この漢字は単体でどういう意味ですか、と聞けば、今週ほかの4語の中で再会する部品が手に入ります。
そのあと声に出す。ここでいちばん遅れる技能が読みです。パッケージを形で見分けているだけで、読まないまま長く生活できてしまうからです。聞いて一度なぞるだけで、認識が「言える」に変わります。
地味な語を軽く見ない。消費期限と賞味期限の違いは、まだ食べられた物を捨てるか、食べてはいけない物を食べるかの差です。要冷蔵はどこにしまうかを教えます。毎週効く、見栄えのしない語彙です。
郵便物をやる。役所からの通知は、手に入るなかで最も価値の高い読解練習です。繰り返しがあり、形式的で、しかも結果が伴います。何についての手紙かを聞き、次に期限を聞き、意味を運んでいた2語を自分で調べます。
うまくいく順序
- 食品のパッケージ。頻度が高く、失敗しても痛くなく、週に何度も目の前にあります。
- 駅や建物の表示。数が限られていて、繰り返しが多く、すぐ役に立ちます。
- 飲食店のメニュー。調理法の語彙が集まっていて、覚えた見返りが分かりやすい場所です。
- 公的な郵便物。硬い文体と、義務を伴う語が出てきます。
- 仕事に関するもの。分野特有で、その部屋にいて違和感がなくなるまでの最短経路です。
カメラが助けにならなくなるところ
返ってくるのは意味であり、意味は言語のいちばん小さい部分です。
ですとだの使い分けも、その言い方がなぜ冷たく響くのかも、断らずに断る方法も、これでは身につきません。それは人から、長い時間をかけて、たいていは辛抱強い誰かの前で少しずつまちがえながら覚えるものです。
消えるのは、そもそも言語に出会う手前の壁です。読めない、面倒だ、通り過ぎる、というあの瞬間。1日10回を1年続ければ、起きなかった学習としてはかなりの量になります。
手書きは今も苦手で、医師のメモや手書きの貼り紙にはよく負けます。これは粗さではなく、本物の限界です。
よくあるご質問
日本語の手書きは読めますか。
読めないことが多いです。印刷された文字はおおむね問題ありませんが、手書き、とくに崩し字はまったく別の難しさで、解決していません。
勉強の代わりになりますか。
なりません。日常生活を練習として数えられるようにする道具です。文法や文体は、引き続き勉強と人から来ます。
訳すだけで終わらせないために、何を聞けばいいですか。
漢字1文字の意味と、ほかにどこで出てくるかを聞き、そのあと語を一度声に出してください。訳だけではその場をしのげますが、何も残りません。